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関係先インタビュー

INTERVIEW
信頼資本でつながる人たち
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Home 関係先インタビュー 休眠預金助成先インタビュー記事 -5-

■NPO法人 場とつながりの研究センター
●同団体プログラムオフィサーサポーター 千馬 雅史

 

休眠預金による助成先15団体と各団体の伴走者(プログラムオフィサーサポーター=POS)にインタビューして作成した記事を掲載しています。
各団体のインタビュー記事はPOSが、POSのインタビュー記事はプロジェクトチームである「チーム・Dario Kyoto」が行いました。

北神エリアを中心に中間支援NPOとして場づくり・ネットワークづくりを進める
NPO法人 場とつながりの研究センター

NPO法人場とつながりの研究センターは、兵庫県三田市を中心に、神戸市北区、西宮市などのいわゆる裏六甲をメインエリアとして活動しています。2005年に設立後、多様な地域課題の解決のために活動する、もしくはしようとしている人々や団体に対し、団体名の通り、これらの人々や団体が集う場やつながりをつくりだすことを目的として活動している中間支援NPO団体です。同団体自身も不登校経験のある若者と出会い、子ども・若者をはじめとした居場所づくり、まなびの場づくりに取り組みはじめ、困ったときにいつでも気軽に誰かに頼ることができる仕組みづくりを模索し、「市民だれにとってもまちの中でゆるやかにつながることができるサードプレイス」がある状態をめざして、さまざまな場づくりやネットワークづくりに取り組んでいます。同団体理事で事務局長の大島一晃さんにお話を伺いました。

事務所前でメンバーたちと。向かって左端が大島さん

困ったときに誰でもSOSの声を上げられる「居場所」をめざす

今回、休眠預金の助成に手を挙げた理由のひとつが、2020年、場とつながりの研究センターに来ていたある中学生がきっかけだったそうです。コロナの感染が各地で広まり、学校が休校になったあるときのことでした。センターにやってきた中学生ですが、元気もなく、ずっと横になって寝ていました。彼と少しずつコミュニケーションをとっていくと、3日もの間、何も食べていないことが判明したのです。これを知った大島さんはすぐ、子ども食堂を運営している他のメンバーとの話し合いを進めました。まずは、彼のおなかを満たすことが先決。そのために、支援してくれる方と一緒にごはんを共にしたり、ボランティアに教えてもらって料理をつくる練習を重ねました。こうして、彼はおなかを満たしながら、先生や家族には言えない相談をすることができる“信頼できる大人”と出会うことができたのです。

このような経験から、実は、今日食べるものにすら困っている、だけどどうしてよいかわからない。誰に相談してよいのかもわからない。そんなひとたちがたくさんいるのではないか、と見えない彼らに想いを馳せることになりました。彼はたまたま私たちとつながっていてSOSを出せたから、私たちは彼の困りごとに出会うことができた。しかし同じように困っているのに、声を上げることのできない子ども、大人ももっとたくさんいるのではないか? そんな不安と想像が生まれてきたのです。

その予感が確信に変わるきっかけがありました。

コロナ拡大中のあるとき、三田市のとある県営住宅でアンケートを実施しました。そこから「コロナがきっかけで仕事がなくなって収入が半減した」など、困窮している世帯の声が届いたそうです。ところが、この困窮世帯はいわゆる行政が認識していないグレーゾーンだったのです。自分たちでは表立って声を上げられない。ともすれば、もっと困っている方がいるのに、自分たちが声を上げること自体心苦しいといったように、行政が拾い切れていない困窮世帯がこの県営住宅という限られた中にも存在することがわかりました。こういった世帯を発見し、支援するために、今回の休眠預金助成にエントリーすることになったのです。元々、場とつながりの研究センターが実践してきている子どもの居場所づくり、さまざまな世代の居場所づくりを実践してきた実績が、今回の休眠預金助成の趣旨に非常にマッチしていることも重なり、迷わずに応募に踏み切りました。

 

休眠預金助成をきっかけに、新たなメンバーとダイナミックに活動が拡大

休眠預金の助成が始まって、団体の活動の幅が拡がり、ダイナミックに活動が大きくなってきています。元々、事務局である大島さん1名とボランティア40名で活動する形が多かったそうですが、今回の助成をきっかけに、新しくメンバーが4名加わりました。それにより、これまで大島さんだけでは活動したくてもできなかった取り組みに着手でき、また新たなメンバーのアイデアや意見を基に、他にもコロナ禍で困っている方を発見し、フォローしていく活動が大きく動き出します。

たとえば、当初予定になかった「外国人支援事業」。新しく加わったメンバー2名が主担当として、コロナで困っている在住外国人を支援するという事業も加わりました。在住外国人には、私たち日本人が思っている以上に情報が行き届いていないことがわかりました。そもそもネット環境が不十分、言葉の壁が大きく、声に出して電話で相談しにくい、災害時の情報、マスクが売られている場所、ワクチン接種の最新情報を知らない、病院に行っても日本語の問診票に記入できない…といったさまざまな壁が立ちはだかります。こういった、コロナ禍で特に困っている外国人に対しての情報提供や、困りごとの相談、雇用している企業側に対しての情報共有など、外国人支援事業メンバーが間に入ってつなぐ役割を担うようになりました。また、地域で困っている方を助けたいという、新規で団体立ち上げを検討している寄り添い人を発見するためのセミナーや、すでに活動している団体向けにリスクマネジメント講座や寄り添い人育成講座など、場とつながりの研究センターがこれまで培った知見とネットワークを活用して、毎月のようにセミナーや交流会を開催できるようになってきています。

 

行政区を超えたつながりを拡大し、共感の輪を拡げていく

元々、経済圏として同一エリアだった神戸市北区、三田市、西宮北部エリアでしたが、行政区で分けられてから、市民間での交流の場がなくなり、情報が分断され、同じようにNPO団体の交流も少なくなってしまいました。場とつながりの研究センターは、自分たちで実践した食糧支援や子どもの居場所づくりの知見、ネットワークを他のNPO団体にも共有しています。これから新たに寄り添い人として団体を立ち上げたいという熱いビジョンを持った方々を支援していく動きを、加速しているのです。場とつながりの研究センターがこのエリアのハブとして、地域でさまざまな課題を抱えた方を支援したいと思う寄り添い人を強くサポートし、共感の輪を拡げながら伴走支援し、彼らの活動を軌道に乗せていくことに、今後期待を寄せずにはいられません。

 

 

インタビューをしたPOS千馬より

今回の取材を通じて、コロナにかかわらず、困っていても声を上げることのできない方の存在が想像以上に多いことに気づかされました。こういった方と支援者とをつなぐ場を創り出すことの意義、知見を共有する場を創り出すことが、今後の社会に求められると感じました。また、少子高齢化に向けて、新たに地域で寄り添い人をしたいという方の声を拾い上げ、組織づくりを応援していくという活動は、今後の地域社会において重要な役割を果たしていくと感じます。想いを持った方の共感の輪を拡げること、そして困っている方が必要なときにSOSを出せるような世代間を超えた地域での関係性づくりは、より今後必要な社会基盤であると改めて感じました。

リスクマネジメント講座で司会進行中の大島さん

Information

団体名:NPO法人 場とつながりの研究センター
住 所:兵庫県三田市三田町29-14 (旧ヨネダ洋品店)
HPアドレス:https://batotsunagari.net/

取材日:2021年10月2日
聞き手:千馬 雅史

同団体プログラムオフィサーサポーター 千馬 雅史

あえて先頭を走らないリーダーがいてもいい。それは理想の上司であり最強の部下でもある

笑顔でインタビューを受けてくださった千馬さん。千馬さんは元の職場で「仏の千馬」と呼ばれていたそうです。クライアントに対してはもちろん、ミスをした部下に対しても彼が怒っているのを見た人はいないとか。ただし、ただ温和な人というわけではありません。彼曰く、まずはミスの原因に気づかせることが大事だ、と。また部下とクライアントとの関係が上手くいかない場合も、上から目線ではなく、その原因、さらに相手が何を望んでいるのかを部下が理解できるように導き、トラブルを回避してきました。そして実績を上げてきたのです。

熊本県出身の千馬さんは家具店を営む家の長男として産まれ、経営者としての父の姿を見て成長しました。改まって話はありませんでしたが、漠然といずれは店を継ぐことになるだろうと、経営学を学ぶため大学は京都の立命館大学へ進学しました。

それまで野球少年だった千馬さんは、大学では違うことをやってみようとバレーボールのサークルを立ち上げました。既存のサークルには参加せず、一から組織を立ち上げるというところに、現在の千馬さんの片鱗が垣間見えます。キャプテンよりは副キャプテン、トップに立つより2番手でいることが得意だったという千馬さん。ここでもサポート役、盛り上げ役を担っていました。

 

経営者になるつもりが経営者を支える立場に

勉学、サークル活動、その仲間たちとの遊び、そしてアルバイト、と千馬さんは学生生活を謳歌しました。目上の人や仲間、下級生たちとの交流によって培われた人との距離感はのちに大いに活かされます。そして4年後。株式会社船井総合研究所(船井総研)に入社。動機は、経営者と多くの出会いがあると考えたから。さらに自力をつけたかったというのも大きな理由でした。いつか自分が経営者になる日のための挑戦でした。

入社後はコンサルタントとして必死に働きました。入社早々の若手が、クライアントである経営者から信頼を得るのは並大抵のことではありません。しかし、コンサルタントという仕事はまず信頼関係を築いてこそ始まるもの。若手は「まずひとつ武器を持て」と教わりました。千馬さんの武器は、上司や先輩から教わった過去の成功事例と、実際にクライアントと共に創り上げた小さな成功事例。そこに成功事例がある、これは大きな説得材料です。成功に至る背景やエビデンスを示すことが、信頼への第一歩でした。

そんな千馬さんの上司だったのが、(公財)信頼資本財団の休眠預金事務局プログラムオフィサーであり現在千馬さんが所属する会社(株)A-dosの社長である福本さんです。福本さんの右腕として、共にリユース業界を主戦場にコンサルタント業務に邁進し、自他共に認める実績を積んでいきます。

 

学んだのは信頼関係の大切さ。そのために多角的な視点で見ること

あるとき、上司である福本さんが講師を務めるセミナーに、千馬さんのお父さんが来られました。大手の家具チェーンに押され、売り上げが伸び悩んだタイミングで、セミナー受講の効果でしょうか、千馬さんをコンサルタントに迎え、なんとリサイクルビジネスに参入。優秀なコンサルタントのおかげで、最盛期には店舗を5店舗に増やすことになったのです。

クライアントからすれば、信頼は自分の想いに応えてもらってこそ生まれるもの。それに応えた千馬さんの、相手の望みや気持ちを汲みとるデリカシーは、持って生まれたものなのでしょう。ご本人は「場数を踏むうちに経験値としてわかってくる」と言いますが、決してそれだけではないことは、千馬さんのひととなりを見ているとわかります。

また、提案には一方的な視点ではなく逆から、あるいは全く違う角度から見るという「意外性」や「柔軟性」も大切です。自分が経営者になるはずだった千馬さん、いつしか経営者をサポートするおもしろさに気づきます。

上司の福本さんが独立したあと、彼のチームを引き継いだ千馬さん。それでもやはり福本さんと一緒に仕事がしたいという想いは強く、自らも退職して福本さんの会社に移籍しました。「何をするかも大事だけど、誰とするかがもっと大事でした」、と千馬さん。大きな看板に守られるより、自分の力でやるんだという想いもありました。信頼できる仲間と共に仕事ができる喜びは何にも代えがたいもの。あえて先頭を走らないという彼のスタンスは、クライアントや組織にとってかけがえのない存在なのだと思います。

「これからはお世話になった業界を大きくすることで恩返しをしたい」と、千馬さんは笑顔で語ります。

 

社会性の高い団体に、持続可能なビジネスの視点を

千馬さんは、(公財)信頼資本財団の休眠預金事務局も兼任して、プログラムオフィサ―補佐に就任しました。

事務局として活動する中で、これから先の時代を見据え、売上や収益性ばかりを追うのではなく、目に見えない価値である信頼関係を大切にしていくことの重要性を日々実感しています。希望ある未来のために、出会う人々との関係性を紡いでいく信頼資本財団の考え方に強く共感しています。

サポートしている「場とつながりの研究センター」は、自分たちも子どもたちの居場所づくりやネットワークづくりなどを実践しながら、他団体の支援も行っているNPO法人です。千馬さんは現在活動をされている方、これから活動を始めたい方々へのセミナーの企画運営などをサポート。「皆さんの想いは本当に熱い。でも想いや熱意だけに依存していては続かない」。志も高く社会貢献度も高い団体だからこそ、自立・自走を考えたとき、ビジネス的な視点もあってよい。そこがお手伝いのポイントだと思う、とやさしくも力強い口調で語ってくれました。

セミナーで講師を務める千馬さん

PROFILE 千馬雅史

熊本県出身。元船井総研チーフ経営コンサルタント。 船井総研入社後、住宅不動産業界、小売業界、サービス業界など約20業種のプロジェクトリーダーを務める。 大手SC店長勉強会講師、企業デューデリジェンス業務、戦略策定から実行支援まで経験を有する。 リユースチーム所属時は、総合、古着、ネット買取専門店業態のエキスパートとして全国に繁盛店を生み出す。 現在はリアル×デジタルのマーケティングをミックスさせ、新業態開発から既存店の活性化、社員教育まで幅広く対応。 リユース企業店長アカデミーTRPA(Tomorrow Reuse Professional Academy)を主宰。

(公財)信頼資本財団 休眠預金事務局プログラムオフィサー補佐。A-KIND未来設計実践塾7期塾生。

 

取材日:2021年9月24日
聞き手:チーム・Dario Kyoto