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<卒塾生同士だから聞ける・話せるインタビュー>

滝本 智史さん:未来設計実践塾3期(2019年度)・A-KIND未来設計実践塾7期(2021年度)卒塾生

インタビュアー:A-KIND塾5期卒塾生・同期塾頭 G5designs大槻彦吾さん

 

今回は滝本智史さん(未来設計実践塾3期生・A-KIND未来設計実践塾7期生)にお仕事と未来設計実践塾、A-KIND未来設計実践塾への感想をお聞きました。

和歌山市のSDGs推進のかけ橋

私は和歌山市の企画政策課で、主にSDGsの事業の担当をしています。6年くらい同じ部署にいます。内閣府がSDGsを頑張っている都市を選定するSDGs未来都市というものに、2019年、和歌山市が選ばれました。選んでいただくときの計画書の策定から関わっていたので、そのまま担当しています。最近はコロナ禍で、課題を抱えていらっしゃる当事者さんの懐に飛び込むというのが難しくなっています。そこで現在の仕事の中心は、友ヶ島という無人島での取り組みです。その島はちょうど外洋から大阪湾に蓋をするような場所にあります。そのため、北側には大阪湾から、南側には外洋からの海洋ゴミが大量に漂着するという課題があり、その海洋ゴミの課題を民間事業者さんと連携し解決するプロジェクトをつくっています。
和歌山市SDGs推進ネットワークという中間組織の事務局も担当しています。200を超える事業者さんが集まるプラットフォームにおいて、事業者さんを橋渡しするようなこともしています。

 

ー和歌山市でのSDGs推進に尽力されている滝本さん。和歌山市に入られたのにはどのような経緯があったのでしょう。

 

公務員への先入観のパラダイムシフト

新卒で入って、12年勤めています。民間での経験とか考え方をもっと身につけたら良かったなと思うこともありますね。もともと私は和歌山市出身で、高校と大学は京都で学んでいました。当時は法学部にいって、弁護士になろうと勉強していました。しかしある時、弁護士になった場合、法的な課題を抱えるクライアントとしかやりとりがないのではないかと、その将来に疑問を持った時期がありました。そんな折、公務員の方とお話しする機会がありました。もともと私は公務員には良いイメージがありませんでした。こんなことを言っては何ですが、「どうせ縦割りで、9時5時で、裁量も無くて、面白くないのだろうな」と決めつけていたんですね。しかし出会った公務員の方が、「面白いことも出来るし、お金は限られているけど、その範囲内で精いっぱいやれるかどうかが面白い。私はこんなことやっている」と熱意を持たれてお話されたのを聞き、「そういう働き方もかっこいいな」と思いました。
大学だけが京都での生活だったら、もっと他の土地も見てみたいという想いも出てきたかもしれません。けれど高校、大学と7年間、京都に居させてもらったので、地元和歌山に戻りたいという想いがありました。そこで和歌山県か和歌山市だと考えたときに、住民に近いところが面白いなと思い、和歌山市に入ることにしました。

 

ー熱意のある公務員の方のお話を聞いて、公務員に対する先入観が180度変わり、和歌山市に入ることを決めた滝本さん。そこからはどんな道のりを歩まれてきたのでしょうか。

 

■一番仕事をやっていて楽しい

12年働いてきて、しんどいこともあります。民間事業者さんも同じことはあると思いますが、働く人それぞれに正義があって、結果として動かない時もあります。働く一人ひとりがなかなか変われないことに対して、どうして変われないのかと、自分自身にも周囲にも、不甲斐なさや腹立たしさを感じていた時期がありました。けれど「そういう人も含めて認めていかないと変われないよ」と、未来設計実践塾で教えてもらいました。なぜもっと良くしようと思わないのかな、と考えてしまうことも無くなったわけではないですし、公利公欲を持って入ってきたのではないのか、と正論が出てしまう自分もいます。そんな時、人に求めてはいけないと教えていただきました。正解がない部署でもあるので、SDGs担当としてはある程度の裁量を認めていただけています。プロジェクトなどを創りだせる部署で働かせていただいているので、充実しています。
塾長の熊野さんはじめ、多くの事業者さんが助けてくださって、それこそ未来に対する信頼でサポートしてくださることが本当にありがたいです。最近も一緒にプロジェクトに取り組んでいる民間事業者さんが、仕事をやっていて一番楽しいと言ってくださいました。一人よがりではなく、相手にもそう思っていただいているというのは嬉しかったです。もっとこうした方が良いとお互いに意見を出し合う仕事で、難しさもあるけれど、やりがいがあって楽しいと言っていただけました。

「SDGsアイデアソンin友ヶ島」という友ヶ島の観光と環境の両立を考えるイベントでの様子

 

ー和歌山市で働く中で、組織の難しさを感じつつも官民の壁を超えて、より良いものを創りだす。その一点においてつながりを大切に、お仕事されている滝本さん。未来設計実践塾3期に参加されたのはどのような経緯だったのでしょう。

 

「こういう世界をつくろうとしている」という哲学に触れて

未来設計実践塾は、たまたまフェイスブックで見つけました。「未来の専門家はいない」と書いてあって、なんだかよくわからないけど面白そうだなと思って、当時の上司の了解も得て、参加しました。
私はコロナ前から、市役所の若手で勉強会を開いていました。これをどう継続していこうかというときに、自分自身が新しいインプットを求めていました。フェイスブックで見た「未来の専門家はいない」とか、「持続可能な社会」といったフレーズが当時の私の興味関心にぴったりとハマっていました。こういう場に参加されている人にも興味がありました。もちろん自分自身の仕事のヒントを得られたらとも思っていました。

 

ー若手の勉強会を始めた動機を少しだけ聞きました。

 

閉塞感がある仕事場をもっと良く出来ないかな、と考えていました。でも自分一人だけで頑張っていても、変えられることはたかが知れているなとも思いました。それぞれの部署から変えられることを着実に進めていけたら、今よりは良い未来が少しでも創れるのではと思い、勉強会を始めました。

 

ー着実に未来に向けて行動する滝本さんから見た、未来設計実践塾はどんな場所だったのでしょう。

 

最初の講義で、熊野さんのシャワーを浴びて、すごいところに来たなと感動したのを覚えています。私もまちづくり系の講演会や、いろいろな方の話を聞いたつもりになっていましたけど、こんな人がいるのだなと思いました。博学な知識を持たれている方はたくさんいらっしゃると思うのですけど、熊野さんの「こういう世界をつくろうとしている」という哲学が私にはヒットしました。聞こえの良いことや、プレゼンが上手な人はたくさんいらっしゃると思いますが、本当に信じられる人に出会った感覚でした。関係性が大事ですよとか、そういうことを真正面から言われる方は存じ上げなかったので、信頼できる方だなと思いました。この人の周りに集まってくる方々もまた信頼できるネットワークなのだろうなと思いました。

 

ー滝本さんはその後、A-KIND未来設計実践塾7期にも参加します。2つの塾の違いや学んだことを聞きました。

 

■主観と客観と俯瞰

熊野さんの世界に触れたことで、このネットワークに入って、ここで自分を磨き上げていきたいなと思いました。卒塾してからも、塾生が集まる会には都合がつく限り参加していました。第7期からは、それまで別々だった民間も行政も含めて開催されるということで、こういうところに参加される民間の方はどんな方なのかなという興味を持ちました。またアップデートされた熊野さんのお話が聞きたいということと、オンラインで参加しやすかったというのが2回目を受講した動機です。

2回目の参加で印象的だったのは、本講義の翌週に任意参加で開かれたシンライノテーブルという講義の中でのことです。講義には熊野さんも参加されていて、主観と客観と俯瞰の全部の側面で見ないといけない、ということを言われていました。私もすべて理解できているか分かりませんが、それまでは自分はどう変わりたいのか、どうありたいのか、という目線で見過ぎていたと感じました。結局、客観的にあなたはどう思っているのかということも含めて観ていかないと、未来は解らない。そして俯瞰は、歴史を見て過去からの流れで、ターニングポイントになっているところを押さえることを話されていました。歴史には類似性があると熊野さんはおっしゃっていました。類似性はあるけれど、どの歴史と似ているのか、どの変化が自分にとって心地よいのか、心地よくないのかということを、主観と客観を行ったり来たりすることで未来予測が出来るとおっしゃられていたのが新しい視点でした。それと「未来採掘ダイアログ」というワークショップも、非常に勉強になりました。
未来設計実践塾3期では、和歌山から参加しているのは私だけでした。そのため私は課題発表も一人で和歌山の未来について行いました。A-KIND未来設計実践塾7期では、民間の方も混ざってのグループの中で、自分たちが思い描く未来像の発表が課題でした。背景や住む地域が異なる人たちが理想の25年後を一緒に考えるのは、良い時間でした。

 

ー行政職員対象の未来設計実践塾と対象の業種を問わないA-KIND未来設計実践塾の両方に参加された滝本さんに、A-KIND未来設計実践塾に参加されると良い人物像について伺いました。

 

公務員の方はぜひ参加されると良いと思います。公務員だから民間だからということは関係なく、地域の未来を考える時代だと思います。公務員は、仕事であるかないかを問わず、地域の未来を考えていい立場だと思っています。そういう人が、いろんな方々と対話をしながら熊野さんのインプットを受けつつ、自分たちのありたい姿を描けるのはとても貴重な時間だと思います。
それと、私の経験からは、何か思い悩んでいる方が、新しいきっかけやつながりを得られる場だと思います。私自身もそうだったのですが、前向きになりたいけどどうしたら良いのかわからない、と思い悩んでいる人はぜひ受けていただきたいです。

 

ー少しでも未来を良くするために行動を起こされる滝本さんのこれからの未来を聞きました。

 

■プロセスに過ぎない。でも成果を創りだしていく

忙しく仕事をしている毎日ですが、必要充分と思えていないのが実際です。熊野さんが「プロセスでしかない」と言われている通りだと思います。そんな中で、少しでも誰かの生きづらさが解消されたりだとか、地域が良くなったりだとか、プロセスに過ぎないとは解っていながらも、何らかの成果を創りだしていけるような自分になりたいとすごく思っています。

 

■インタビューをした大槻より■

終始、和やかな笑顔でインタビューを受けていただいた滝本さん。インタビュー冒頭に「なぜ髭を生やしているのですか」とお聞きしたところ、「髭を生やしているからパフォーマンスが落ちるわけではないですよね」と言われたことが印象的でした。髭を生やすことで周囲の目(客観)とパフォーマンス(俯瞰)を無意識に行ったり来たりされている滝本さん。和歌山市の未来が楽しみになる時間でした。

PROFILE 滝本 智史(TAKIMOTO Satoshi)

1987年、和歌山市生まれ。小・中とサッカーにあけくれ、高・大は京都で過ごす。法曹界を志し大学で法学を専攻するも、3回生時に地元のために働きたい気持ちが高まり、公務員志望に転向。2010年4月、和歌山市入庁。国保年金課、高齢者・地域福祉課を経て、2016年11月から企画政策課。2019年からはSDGs推進の担当者として持続可能なまちづくりに取り組んでいる。

(公財)信頼資本財団 未来設計実践塾3期、A-KIND未来設計実践塾7期卒塾。

 

 

(2022年1月インタビュー)