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<卒塾生同士だから聞ける・話せるインタビュー>

五味 孝昭さん:未来設計実践塾4期(2020年度)卒塾生

インタビュアー:A-KIND塾5期卒塾生・同期塾頭 G5designs大槻彦吾さん

 

今回は、京都市職員の五味孝昭さん(未来設計実践塾4期生)にお仕事の経緯と未来設計実践塾への感想を伺いました。

伝える人からつくる人へ

私は今、中小企業支援のセクションにいます。その一環として、社会的企業を育成する事業に携わったことがきっかけで、未来設計実践塾に参加しました。

私たちには企業の経営をした経験がないので、直接支援するというより、支援の仕組みや体制づくりといった裏方の仕事をしています。事業支援のプロである京都商工会議所や、多士済々なコーディネーターが並ぶSILK(京都市ソーシャルイノベーション研究所)をはじめ、各機関において相談体制を整備するため、財政面をはじめ、様々な後押しを行っています。あるいは、地域の中小企業を「地域企業」と位置づけて、市民の皆さんと一緒に盛り上げていこうということで、条例を制定したり、「地域企業未来力会議」と呼ばれる会議体、というか、今風に言えば「エコシステム」ということでしょうか、その運営事務局を担ったりしています。そういう意味で言うと、一般の方々とは馴染みは薄いかもしれません。
私はこの仕事が4年目で、当初は今お話したような仕事がメインでしたが、コロナ禍に入ってから、それぞれの事業者さんを直接支援する事業が増えました。例えば、売り上げが5割減になった事業者さんへの補助金制度です。非常に混乱している状況のため、想定の10倍も20倍も相談がありましたが、何とかして対応できないか、問い合わせに追われている、というような日々です。(※2021年12月時点)

 

ー市役所にて中小企業支援をされている五味さん。コロナ禍では緊急かつ重要な支援を優先しながら、補助金などの対応と模索に明け暮れる日々となったと話してくれました。どのような遍歴で京都市に勤めることになったのでしょう。

 

大学卒業後は、地元の長野県の新聞社で働いていました。ハードな会社だったので、1年持たずして退社しました。まだ世間も見えてない、20年も前の話ですが、言葉の力で世の中を良くしたいという想いがありました。新聞社で働く中で、事故や事件の現場に赴くこともありました。そうした悲惨な現場の取材をする過程で、疑問を感じたこともありました。亡くなられた方の無念を感じながら、でも取材として情報を集めないといけない。世の中を良くするために入ったつもりでしたが、こんなんで良いのかなと思いました。勤めていてしんどかったというのもあるのですが、新聞社ってニュースをつくる側ではなく、伝える側なんですね。新聞社1年目は、警察や役所に触れることが多かったのですが、触れているうちにどちらかというと伝える側ではなく、つくる側になりたいという思いになり、今の仕事場に転職しました。

 

ー世の中をよくしたいという志から入社した新聞社では、情報発信を伝える側ではなくてつくる側に回りたいという、胸の奥にある動機を明確にした経験でもありました。京都市に入られてからのお仕事について話が続きます。

職場で電話対応する様子

10年後「あの時の自分があるから今の自分がいる」という経験

1年目は、広報紙をつくらせていただきました。あるいは、当時まだ珍しかった「審議会の公開」にも携わりました。よそのセクションではやらないようなお仕事を任された時は、とてもやりがいがありました。福祉の担当の時は、制度づくりや議会対応など、裏方の仕事が多かったです。
今、思えば苦しさもたくさんあります。コロナ禍の対応でも、事業者のみなさんが苦しまれていて、その声に数多く触れることになりました。とてもしんどかったんですけど、10年、20年たったら「あの時があるから今の自分がいる」と思える経験になるのかもしれません。罵声を浴びたこともありましたので、なかなかキツかったです。けれど、私としては、直接市民のお役に立てることがしたいのだと思います。

 

ー裏方の仕事も表側の仕事も、しんどい仕事であったとしても、市民の声を聴き、何かの役に立てる行動を起こすことがやりがいだと語られる五味さん。未来設計実践塾には、どのような経緯で出会われたのでしょう。

 

熱意を持ってソーシャルビジネスに取り組む人々との出会い

SILKに関わっていましたので、一度は体験しなければ、という想いがありました。同時に、私たち役人の中でも輝いている方々がいて、そんな人たちはどんなことをされているのかなと感じ、一度接してみたいと思ったことも理由として大きかったです。世の中を良くするということの第一人者である塾長の熊野さんに、お会いしてみたいというのも動機ですね。
コロナ禍での参加だったのですが、たまたま同じチームに、私の出身地と同じ長野県の方がいらっしゃいました。大先輩の方で、今では市役所を定年退職され、地域活性化のための仕事を起こされています。その方との出会いは、本当に大きな収穫でした。先日、出張の際にお会いしたのですが、私も将来、こんな仕事をやってみたいなと思いました。
信頼デイでは、A-KIND塾で学ばれている民間の起業家さんとの出会いが数多くありました。行政マンである私には、大変刺激になる出会いでした。行政としては、SDGsや社会課題の解決を推進している、と掲げています。一方で、目の前にいる事業者さんはそうしたことを考えている方はそこまで多くはなかったのですが、信頼デイに参加して、熱意を持って社会課題の解決に取り組まれている方がたくさんいらっしゃるという実感を得ました。

 

ー未来設計実践塾に参加された五味さんは、日常では出会うことがなかった市役所の大先輩との出会いや社会事業に熱意を持って取り組んでいる事業者との触れ合いが大きな収穫だと語られます。それとは別に学んだこととはどんなことだったのでしょう。

貨幣に変わる新しい価値

最初の熊野さんの講義で、カルチャーショックを感じるというのはみんなそうだと思います。他には京都大学こころの未来研究センターの広井良典先生の講義がとても勉強になりました。人口論のお話や、持続可能な社会保障制度についてです。元々、先生の本を読んでいたのですが、考え方を学ぶことが出来ました。今、目の前にある問題を地球規模で捉えること、そして貨幣だけではない新しい価値が必要だというお話です。

信頼資本財団には無利子、無担保、無保証の融資事業があります。「なんでそんなことするんだろう」とか「信頼資本ってなんだろう」と懐疑的な眼も持っていたのですけど、お話を聞いていると本当に信頼資本はあるんだなと納得しました。

塾に入る前、熊野さんとは名刺を交換させていただいたことがあるだけでした。こんなこと言っていいのかわかりませんが、「イカツイ人やな」という印象でした(笑)が、実際にはとても気さくな方でしたね。市役所内でもお名前は聞いていたのですが、直接お話を聞くと確固たる理念をお持ちの方で、本当に社会を良くしていかなければならない、という信念を持たれていることを感じました。

 

ーA-KIND未来設計実践塾には、どんな方が参加されると良いなと感じられているのでしょうか。

 

モヤモヤしている人は絶対に参加した方が良い。私がそうだったように。

漠然としているのですが、役所でモヤモヤしている人は絶対参加した方が良いと思います。私がそうでした。世のため、人のため、社会のためになろうとしている人は、役所以外にもこんなにいるんだということを感じられ、熱意に接することができる場だと思います。

役所はとても組織が大きいので、一人ひとりの想いは反映されにくい環境です。一人ひとりが好き勝手に動いたら、市民は困ってしまいます。とはいえ、一人ひとりが何らかの想いを持っているので、その想いを形にできず、モヤモヤしている人は多いと思います。矛盾しているようですが、それで正しいと思っています。

役所は、社会課題のデパートとも言えると思います。世の中の社会課題で、民間の力でどうにもできないことは役所に回ってきます。役所でモヤモヤしている方が参加されることで、解決の糸口が見つかるのではと思います。

 

ーそんな五味さんはどんな未来を描いているのでしょうか。

 

役所と民間を超えた、皆で向かえる社会の実現

役所は人事がつきもので、いつまでもそうしていたいと言っても難しいのですが、今は社会を良くしていこうとしている事業者の方々の後押しとなる支援をしていきたいと思っています。

それまでの民間向けのA-KIND塾と行政向けの未来設計実践塾が一体化され、とても期待しています。私にとっては、民間で社会事業に取り組まれている熱意のある方々に触れられたことは大きかった。これからは官と民と分けずに、より良い世の中をつくるための“ちょっとしたこと”を一緒にやっていけたらと思います。コロナ禍で社会が分断されていっているとよく言われます。そこで足の引っ張り合いをするのではなく、コロナ禍や人口減少などの課題に対して、立場を超えて、みんなで向かえる社会を実現していきたいです。

 

 

■インタビューをした大槻より■

「やってもやっても終わらない仕事や結果が見えない仕事が一番しんどい」と五味さんは語られました。コロナ禍で現場に立って罵声を浴びることの方が、私からすると非常にしんどいと思い、聞いてみました。「それはそれで、しんどいですよ」と五味さんは語られながらも、市民の声に耳を傾け、何かできないか、何か手立てはないかと疾走していれば、10年後20年後にはあの経験が今の自分をつくったと振り返ることができるとイメージされているそうです。官民の違いを超えて、社会課題に共に向き合う私たちの未来を、五味さんを通じて感じられたインタビューでした。

PROFILE 五味 孝昭(GOMI Takaaki)

京都市産業観光局地域企業イノベーション推進室 地域企業振興課長 | 京都

信濃毎日新聞社を経て平成12年入庁。平成20年4月から、産業観光局産業振興課(当時)にて、リーマンショック期の経済対策、企業誘致等を担当。平成23年4月から保健福祉局保健福祉総務課企画調査係長として、局内外、議会との連絡調整や、いわゆる「ごみ屋敷」対策条例の制定等に携わる。平成30年4月から産業観光局中小企業振興課長(当時)として、中小企業・地域企業の持続的な発展に向け、条例の制定のほか、経営支援、ソーシャル・イノベーションの創出等に取り組む。

(公財)信頼資本財団未来設計実践塾4期卒塾。4期副塾頭。

 

 

(2022年1月インタビュー)