信頼資本財団について 社会事業を応援する

関係先インタビュー

INTERVIEW
信頼資本でつながる人たち
INTERVIEW
Home 関係先インタビュー 多様性のある教育が選べる社会を作りたい!

大阪府池田市で一般社団法人さつきやま森の学び舎(以下、学び舎)を主宰されている木村太郎さんにお話を伺いました。

学び舎は、幼稚園児から中学生までの子どもたちが大阪市内各地から通うオルタナティブスクールです。2012年、太郎さんがお子さんの入園先を考えた時に、トエックのようちえん(徳島県にあるNPO法人自然スクール)のような、自然や人とのかかわりを通して、のびやかに、その人らしく成長できるところがいいなと思い、自分でつくることに。2009年にガイド事業として設立していた株式会社EGGSの教育事業部として、月2回のプレクラスから始め、翌年預かり型をスタート。のち、子どもの成長と共に、保護者の求めに応じ2014年に小学部、2021年には中高部がつくられました。

 

学び舎の「共育方針」は「幸せに生きる力をつける」。

幸福学の先駆者である前野隆司さんの研究にある4因子「やってみよう」「ありがとう」「なんとかなる」「あるがまま」が常に満たされる環境づくりをしています。

それは、社会へ出た時に、何か足りない(不幸せ)と気が付くこと=「幸せに戻す力」をつけることでもあります。「(自分で)戻せなくなったら、学び舎に来たらいい。そこには幸せな人がいる。」と太郎さんは話します。

太郎さんも人生の中で、この4因子を意識してとり入れてきました。学び舎をしてきてよかったことは、子どもたちと共に、人として成長し続けられる環境があることだそうです。

「幸せでいたいから、周りや社会も幸せでいてほしい。僕だけが幸せでも周りが不幸せならば、結局は不幸せになりますよね。」

山が好きで、12歳から山登りをしていた太郎さんは、上高地の山小屋管理人やネイチャーガイドをしていました。

やがて世界中にいるガイド仲間とお客さんを繋ぐエコツアーを、2012年に学び舎のスタートと同時期に始めます。きっかけは、知人夫婦からオーロラ観測に同行してほしいと頼まれたことからだとか。そうした旅の体験を人に話すうち口コミで評判が広がり、今ではオーロラ観測、マチュピチュ、オーストラリアなど世界中を飛び回っている太郎さん。いつからか「空飛ぶ園長」と呼ばれています。

実はこのガイド事業は、学び舎の経営を補填するための手段でもありました。学び舎開園から7年目、黒字に転換し、一般社団法人を立ち上げて学び舎を独立させました。よい人材を集め、適正な給料を確保することを妥協なく続けてきて、現在の学び舎は、利用者の月謝で自走しています。

これまで公的補助等を望まなかった理由として、特殊な教育をしている学び舎に行政が入ることで一般大衆化するのではないかと懸念があったそうです。

けれども不登校が社会課題としてとりあげられる時代に、学び舎の若手スタッフが発した「誰でも通える場所にしたい」という言葉から、次の行動が生まれます。

 

 

企業版ふるさと納税を活用した不登校支援の事業を設計

 

フリースクールや居場所等を見つけられても、経済的な理由で行くことを諦めてしまう家庭があります。心情的な理由で行くことが難しい場合は、ゆっくりと寄り添う時間を必要としますが、前者の場合は経済支援があれば即解決できることだと太郎さんは考えました。

そこで企業版ふるさと納税を活用した不登校支援事業を設計し、自治体に提案。また、そういった場所で働く人の幸福度も重要視しており、働く側も支援できる仕組みを提案しています。

寄付をする企業にとっても、社員の家庭に不登校児の課題があり、就業時間を短縮せざるを得ないこともあるといいます。

「不登校傾向も入れると60万人のお母さんの雇用に影響がありますよね。人材不足の問題も出てきたり、それをサポートしている会社ですとアピールできることは、企業にとっても有益なはず。」

提案先の自治体の不登校児は、おおよそ200人。

「今、困っている子どもやお母さんがいて、僕たちが出来ることがある。将来、僕がよぼよぼになった時に、周りに助けてくれる人がたくさんいたらいいいと思うんです。」

 

学び舎から始まった共育(教育)との関わりは、行政と結びつき、新たな試みが拡がりつつあります。

「たまたま出来ることがあり、助けてくれる人がいて、やっています!」「僕は、4因子の中の『なんとかなる』が強いのかも。」と軽快に話す太郎さん。学び舎のスタッフからは「人たらし」と呼ばれているそうです。

太郎さんの経歴や取り組まれている事業の話には、「人たらし」、いや「太郎マジック」ともいえる、偶発的出来事を信頼に発展させるしなやかな力を感じます。

「経済によって起きている問題の解決は得意なんですよ。そうした得意分野を活かして、奈良の森のようちえんでの出逢いをきっかけに関係性が生まれた信頼資本財団との関わりを深めていくつもりです。」

政策提言のエピソードを話す太郎さんは、あるがままの自分を楽しんで「幸せ」に生かすことで、社会の幸せに貢献しているのだと感じました。

Information

一般社団法人さつきやま森の学び舎 HP

 https://eggs-nature.net/manabiya/

PROFILE 木村 太郎(KIMURA Taro)

1975年東京都に生まれる。小学校6年生の時から登山を始め、それ以来37年間自然と関わりを持っている。20代で長野県の山岳観光地である上高地で山小屋勤務。その時に出会った素晴らしい森を守っていきたいと思い、上高地で初となる民間のガイド団体を設立。人生の大きなテーマが「自然」ということを実感。

2007年に上高地を離れ大阪に移住。そこで株式会社EGGSを設立し、エコツアー事業と教育事業を立ち上げる。教育事業として「森のようちえん」「小学部」「中高部」などのクラスを作り、子どもたちが自然の中で遊ぶ場所を提供。

今は子どもたちが教育を選べる社会を作るために活動に力を入れている。

 

 

取材日:2024年10月6日
聞き手:サステナme編集部