シンライノコトバ

2020.05.15

Peer to Peer(ピア・トゥ・ピア) の社会

今回の新型コロナウィルスパンデミック後の社会は、どうなるのか。
世界中の人々がそれを考えている。

我々は、パンデミック宣言による社会隔離・分断が起きる以前から、現代社会を行き過ぎた工業社会と分析してきた。 そして、人間と自然を経費にした見込み大量生産・販売は、豊かな社会関係性を壊して、「孤独」を増幅するシステム化していると考えてきた。

近年仮想通貨・資産で再注目されるようになった技術にPeer to Peer(ピア トゥ ピア)がある。
対等な関係性。
そもそもPeerとは、年齢•地位•能力が同等の者、仲間や同僚の意味を持つ。
そもそも技術用語だが、社会の関係性に活きる言葉だと思う。

衣食住が満たされることを追い求めた人々が、衣食住足りても幸せになるわけではないと気づいた時代。
幸福の価値が個人の自由の獲得にあり、行動の自由を手に入れる為にお金がいるという功利主義と、言動の自由を手に入れる為に高学歴が必要だという能力主義が合わさって、高所得獲得能力を得ることが重要だと思い至った時代であったかもしれない。
その現状に執着し、積み上げた過去にこだわり、これを論理的に説明することに腐心し、自己肯定を重ねていくことで、対等な関係性が遠ざかり、「孤独」になるという不幸を抱えてしまっているようなことが散見された社会。

私たちの心身が不当に抑圧されたり、拘束されたりすることがあってはならず、自由が大事であることはもちろん疑いようがない。
しかし、自分勝手な行動や言動を周囲に容認させたり、実は誰かから与えられたものの中で受動的に選択しているだけなら、それは自由とは呼べないだろう。
自らの中に他者の思考を入れて、助けあえる社会性を持った個人の対等な関係性から得る自由が幸福感につながるのではないか。
他者と共に社会を生き抜く制約条件下での幸福を求めるうちに、孤立から解放され、共感・互恵の中に生きていけるようになる。
私たちが以上のように考えてきた社会の中で、COVID-19が広がり、社会分断が起こっている。
日本の中では、海外の情報の中に見られるような助け合いよりも、自警や差別が目立つように見えるのは情報の偏りによるものだろうか。
「高齢者の方、代わりに買い物をしてきますよ」といった貼り紙がニューヨークやマドリードをはじめ各地で頻繁に出されているような話を読んだ。
身体的に離れないと感染防止にはならないが、精神的には繋がりたい社会性がある人間が自ら分断に歩み出て、生まれるものは何もない。

実際は、パンデミックショックを機に、技術的なオンライン化を進める一方で豊かな関係性を求める要求が強まっていくのではないかと期待している。

そうした社会に向け、事業はどうしていったら良いのか。
社会事業を応援している私たち財団が言えることは、ますます売手が買手の気持ちになる共感力を上げることだと思う。 その共感価値が膨らみ、関係性価値市場が構築されていく。
近現代の市場経済では、情報分析による価値創出で当事者意識のない見込み大量生産が行われ、その結果、自然と人間関係が荒廃し、気候変動や資源枯渇問題が起こった。
パンデミックショックで一気に社会的制約条件が増大したが、一旦収縮した条件もある。
これを更に逓減し、この状況下に生まれた信頼関係の大事さを求める社会の二ーズを形にし、その価値市場を構築する社会に方向性を定めたい。

Peer to Peerの社会へ。
2020年5月
信頼資本財団 理事長 熊野英介