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2018.09.14

青いダンゴムシ

子どもの頃に見つめていたダンゴムシ。

黒い色ばかりではなく、青くなったダンゴムシが存在する。

「イリドウイルス」というウイルスが細胞質内で増殖し、青緑色ないし青紫色の組織になるからだと言われている。

通常のダンゴムシは暗い場所を好むが、感染すると明るい場所に出て行くようになり、土や枯葉の上に現れた青い体を、鳥などが食べ、ウイルスが広範囲に運ばれていく。

ウイルスが、生存戦略のために、ダンゴムシの本能を変えてしまっている。

人間は、社会的に進化を遂げてきたのだから、人との関係性や自然との関係性を大事にする生き物だと言える。

しかし、現代社会は、メディアによって一度脱色された情報を編集しながら、自ら収集した意図ある情報としてこれを吸収し、便利な技術革新による生活環境の変化に依存しながら、「選択できる幸福感という状況分析の思考」に陥っている。

判断依存型のウイルスに感染しているのではないだろうか。

本来は、選択出来ない制約条件の中で、状況を分析したのちに、その状況から原因を分析し、原理原則を発見し、新しい状況を作っていく生物だったからこそ、人類は世界のあらゆるところに進出して、繁栄を築いたはずだ。

原因分析をしなくなり、作られた情報に依存するだけで、協力して状況を新しく作ることができなくなった社会は、社会性を忘れさせ、個人の可能性を諦めさせる。

自分の感情と環境にのみ反応する人間は、社会から遠ざかり、便利な仕組みに依存し、存在を消していく。

ウイルスに感染してしまった青いダンゴムシのようだ。

 

感染を防ぐためには、愚行に無関心にならないことである。

人間に関心を持ち、自然に関心を持ち、社会に関心を持ち、自分に関心を持つことで、人間の可能性や社会の可能性、自分の可能性に気づいていく。

その結果、近代工業社会がつくり出してきた関係性の分断から解放され、共感が生まれ、信頼関係を育むことができるようになっていくだろう。

信頼に基づく関係性が網の目のようになり、協力して状況を作っていくことができるようになれば、日々の暮らしや災害の中で、多くの生命の尊厳が失われていくことを防げるのではないだろうか。

2018年 9月

信頼資本財団 理事長 熊野英介