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2017.12.28

暗闇のかなたの光明〜 信頼が資本になる時代 〜

2017年が終わろうとしている。
 
江戸から明治への節目「大政奉還」の現場だった京都では、150周年の企画が続いた。
 
世界的にはロシア革命100年という節目の年でもあった。
 
西洋は命がけの宗教改革や市民革命で「市民」という概念と「共和制」という国のフレームをつくりあげた。
 
しかし、その後生まれた資本主義で、資本家と労働者という階級が生まれ、格差が広がっていった。
 
その結果、市民革命の目的であった個人の生命や財産を守る自由があるという社会ではなくなり、工業社会が始まっていない王制のロシアからロシア革命が起きて、人民が中央集権制を敷くという統制社会が生まれた。
 
同時に、全体主義と言われる統制社会も出現した。
 
一方日本は、比較的平和裡に絶対王制の江戸時代から天皇を君主とする立憲君主制に移行し、西洋的な宗教改革や市民革命を経ることなく、東洋で初めての工業社会でもある明治という時代を作った。
 
そして、この「立憲君主制」は、新憲法の発布された第二次世界大戦後も日本文化という観点において、日本人の根本価値に染み付き、今日まで続いている。
 
ただし、実態は、戦後の荒廃を経済力で修復するために計画経済を国家主導で行い、軍事産業の民生転用により猛烈な経済発展を実現させ、その結果深刻な公害問題も起こした。1985年の円高ショックからは、大量輸入の大量消費市場をつくり上げ、情報が価値をつくり、大量生産、大量消費、大量廃棄の行き過ぎた工業社会を基盤にした近代システムが人民を統制し依存させてしまうようになった。
 
絶対王政のようにも見える「絶対近代システム制」とでも呼ぶべきものが、中央集権的行政と資本家的産業界の既得権益保全と高齢者世代の既得権受益を目的化した国家運営を行い、社会は思考停止状態で中世に逆戻りをしたかのようになってしまっている。
 
世界も中世に戻ったかのように、宗教的原理主義が増えている。
 
そのような時代にあって、未来の予兆を明確に感じたのが今年であった。
信頼資本財団が年に1回開催している信頼資本社会を考える「信頼デイ」では、例年、「信頼で何ができるのですか?共感ってそんなに力になりますか?」という質問や疑問が多くあったが、今年は「やっぱり信頼が大事ですよね。共感の時代だと思います」という会話が中心になっており、中央集権的統制による安定社会でなく、共感や互恵の思いで参画する共同体に信頼感を感じ、安心社会を志向する意識が増加してきている風を感じた。
 
また、12月には「核と鎮魂」というシンポジウムを主催し、「希望の探求」というシンポジウムに協賛して、近代の陰と光に深く向き合う機会を持った。
 
更に、「信頼デイ」からこれらのシンポジウムの1ヶ月間を「HOSP月間=本気の大人は凄いぞプロジェクト」と設定し(後援:日本未来学会)、近代を、現代を知り、未来を考える多くの場を開いた。
 
その結果、「核と鎮魂」では「対立から対話へ」の期待が多く、「希望の探求」では「新しい文明へ」の期待が多く、HOSP月間では「社会問題に無関心ではいられない」という人々の意識が大きくなっているのを実感した。
 
思考停止社会から未来への胎動が始まった時代の音が聞こえてきた。
 
テクノロジーにおいては、信用の非対称性を破るブロックチェーンも発展し始め、管理者のいるパークモデルから、参加者全員が管理するコモンズモデルが動き出し、自律分散化が社会インフラになることで社会性の核になる共感性や互恵性や参画性という精神的人間性が復活する、そんな進化発展した共和制社会が始まったと感じている。
 
【信頼】が産業や社会の資本になれば、産業や社会が発展するするほど、信頼が増幅し、人間性が満ち溢れる社会の建設を目指す時代になるという設立以来の理念は変わらない。
 
進化した共和制社会は、血で血を争う権力闘争でなく、精神的人間復興を求め合う市民意識革命により達成する人間の理想社会につながるのではないか。
 
前述「HOSP月間活動」を今年後援してくれた日本未来学会とも縁の深い梅棹忠夫氏は、亡くなる直前、『人類の未来』の中で、未来を「暗黒のかなたの光明」として描こうとし、具体的には述べず、絶筆となった。
 
私は、進化した共和制の社会が光明だと思っている。
 
来年からは、その光明をより現実的なものにしていきたい。
 
そのような思いを持った仲間が集まれば、我々は、必ず光明を手に入れられると信じている。
 
来年も宜しくお願いします。
 
 
2017年12月
信頼資本財団 理事長 熊野英介