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2017.02.17

働く

「プレミアムフライデー」が今月24日から始まる。
月末の金曜日は、仕事を15時に切り上げて、豊かな週末を過ごす日にしましょうと経済産業省と経団連が音頭を取って促進している活動で、経済産業省の委託を受けた広告代理店博報堂が普及のための事務局を務めている。
就労者の週末時間を増やすことで、旅行や買い物、食事などを楽しんでもらい、内需の柱である個人消費を伸ばしたいということだろう。
政府も内需の伸び悩みを解消すべく、活動加速を後押しするとの方針を打ち出している。
 
同じ12月「カジノを含む統合型リゾート(IR)整備推進法(カジノ法)」が可決され、26日に施行された。
これによって、カジノが解禁されることになる。
 
そして、これも同じく12月、改正国民年金法が成立した。
物価が上がっても賃金が下がった場合は連動して年金支給額も下がるという点が、支給に関する大きな変更点である。
 
以上、昨年末の3本のニュースは、消費を煽り、不労所得を賛美し、長寿の不安を増やすというメッセージを国民に伝えた。
 
人々の働く意味や暮らしの在り様が、所得や消費を通しての税金徴収対象のみになって久しい。
本質的には、どんな働き方や暮らしぶりであれば、人は安寧を感じ、ここに生まれて良かったと次世代へ希望を持ってバトンを渡していくのであろうか。
 
税金によって国家運営を任せているはずの人たちへの信頼が、言行の変節や税金の無駄使いや法に触れる行動によって大きく損なわれている中で、将来に希望を見出せる働き方や暮らしの姿が見えぬまま、自己責任の消費や長生きを奨励しても、安心できない人々の心が冷えるばかりだということが見えないのだろうか。
このままでは、生活防衛だけでなく、人生防衛をしなければならなくなっていると考える人が増えていくだろう。
 
豊かに生きていくことは、豊かな関係性を増幅させていくことだ。量の豊かさではなく、質の豊かさという意味で。
その手段で一番有効なのは「働く」時間だ。
人間もまた狩猟・採集をしながら仲間と命を繋いできた。仲間と共に身体を動かし、働いてきた。
その真価は今も変わらない。
働くことで、仲間を手に入れ、知識・知恵を手に入れ、獲得した対価を分け合う喜びや、社会に貢献していると共感し合う顧客との信頼関係を手に入れ、最終的には価値観を社会の中で表現するチャンスも手に入れることができる。
そんな風に働き、そして家族や地域や職場や様々な縁でつながった中から、より深くつながる関係を選択し、選択外との関係や環境も劣化させないよう配慮する経済の中で暮らしていく。
 
信頼の増幅ができる真の豊かさを手に入れる「働き」をして、社会を再構築する時代がきている。
 
仲間のみなさん、急ぎましょう! 社会が消費で消耗しきってしまう前に。
 
 
2017年 2月
公益財団法人 信頼資本財団
理事長 熊野 英介