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【メンバーブログ21:評議員 名越秀夫(1)】

財団メンバーによるブログ二巡目、お題は「問題の本質」です。
一巡目のお題と並行して掲載していきます。

今回は、評議員を務める名越秀夫氏に「問題の本質」を語っていただきました。

名越秀夫(信頼資本財団評議員)

 

「問題の本質」ということですが、とても難しい設問です。

世の中はますます専門が分化してきて、専門以外の領域はなかなか理解が難しいのが現実です。

特に教育や職業によって、特定のキャリアを積めば積むほど、自分の経験に基づく判断を行うようになり、他の専門分野や異なった世界観を理解できなくなることも多くなります。

特に今の社会は、大きく文化系と理科系に分かれてしまいますので、理科系の方にとっての「問題の本質」と、文化系の方にとっての「問題の本質」は、ずいぶん違うものになります。

それは、文化系と理科系がそのよって立つ基礎が違うからです。

理科系にとって大切なことは、事実です。事実は1つです。

事実は誰が確認しても同じ結果になるはずです。

結果が違うとすれば、それはそれが事実でなかったのか、またはやり方が間違っていたのか。

それでも科学の発展は、先人の発見した事実を疑うことから始まります。

わずかな例外を見出し、それが説明できる新たな法則を打ち立てる。

勇気のいる行為ですが、事実が味方してくれます。ニュートンの万有引力の法則を覆したアインシュタインもそのような信条だったのでしょう。

しかし、アインシュタインの相対性理論もまた克服されることになります。

これは事実が間違っていたというより、認識できた前提が異なったからです。科学の発達によって、人間が認識できる範囲は飛躍的に広くなっています。

とはいえ、私たちの認識している範囲は、本当はまだまだすごく小さいのかもしれません。

高い次元の世界に住む生き物にとっては、時間や距離をこえるタイムマシンやUFOなんて自家用車くらいなのかもしれません。

私たちがわかっていることなんて、実はすごく少ないのです。

これに対し、文化系で最も大切なことは、真実です。

真実とは、たくさんある事実の中から、問題に対応した本質を見つけることです。

ですから真実はたくさんあります。

なぜたくさんあるかというと、事実の中から真実を選ぶとき価値判断を働かせるからです。

価値判断は人によって異なります。

車を選ぶとき、スピードが一番という人もいるでしょうし、安全が第一という人もいるでしょう。

どちらが正しいというわけではなく、どちらが状況をうまく説明できるのか、という問題です。

うまく説明できれば、より多くの人が賛成するでしょうし、そうでなければ少数派になってしまうでしょう。

しかし、状況が変われば、判断の基準も変わります。

少数派はいつまでも少数派であるとは限らず、あっという間に多数派になったりします。

ですから、異なった価値観も十分尊重されなければなりません。

エネルギー問題を例にとれば、今の趨勢は、エネルギー大量消費が事実であり、真実である、といえます。

まして、シェールオイルの開発によって、資源有限説は絶滅寸前にあり、生産はイケイケ、消費はがぶ飲みの状態です。

しかし、地球が数千万年かかって蓄積してきた化石エネルギーを、消尽し尽してもいいはずはありません。

「私たちがわかっていることなんて、実はすごく少ない」こと「異なった価値観も十分尊重されなければならないこと」を忘れてはなりません。

私たちは、自然のことを十分理解してはいないし、将来のことを予測できないとすれば、現代社会のエネルギー蕩尽システムもいつまで続けられるかはわかりません。

そうであるなら、やはり省資源型や環境配慮型の経済システムを構築しておくことが、より持続可能な経済システムであるといえるはずです。

 

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*名越秀夫評議員の紹介ページはこちら →http://shinrai.or.jp/about/about-staff/

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