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NO.38 名越 秀夫 評議員「経済成長を考えてみよう」

「経済成長を考えてみよう」c555c377d5dbefd178436859c6460dd7_s

名越 秀夫 評議員(弁護士/弁理士)

 

経済成長とは何か

アベノミクスの真髄は、経済成長によって、社会の諸矛盾を緩和しようとするところにある。ところで、この経済成長は、一般には、資本、労働力、全生産性要素の3つによって達成されるとのことなので、「成長」とは、それらの要素の増大や向上を意味する。日本の高度成長は、土地の値上がりを基に銀行から企業に融資が行われ、地方から豊富な労働力が都市に集中し、生産技術が諸外国に比べて先進していたことにより達成された。しかし、今はそのような環境にはない。

アベノミクスの処方箋は、国債を出して資本を提供し、1億総活性化で高齢者・女性を労働力とするところにある。しかし、国債は借金であり、高齢者・女性も労働力としては制約要素がまだたくさんある。

では、全生産性要素はどうか?全生産要素改善の主要なものに技術革新と規制緩和があるが、技術は今日容易にキャッチアップされる環境にあり、規制緩和は岩盤に鑿の観がある。端的に言えば、日本の潜在成長率はすでに余地がないのに、かさ上げをしようとする試みである。

 

8554c3b9fddee443496784175a835933_s経済成長は何をもたらしたか?

確かに、経済成長は人間に生活の安定と豊かさをもたらした。しかし、潜在成長率以上に成長しようとすると、それは過度な成長ということになる。過度な経済成長は、大きな弊害をもたらしている。資本についていえば、現代では金融資本が産業資本を遥かに凌駕しているが、金融資本によって富を得ているのは、それを駆使できる極一部の人間だけである。
労働力は、グローバリズムの進展によってその価値が世界同一価格へ収斂していくので、先進国の労働者にとっては、賃金の低下を意味する。ITの技術革新は、筋肉労働のみならず頭脳労働にも取って代わろうとしているので、職業が減る。即ち、潜在成長を超えた過度な成長の追及は大きなひずみをもたらしている。

 

それでも成長は必要なのか?

成長しないと、雇用機会が作り出されないといわれるが、少子高齢化社会では、確実に新卒者より退職者が多くなり、人手不足が生じている。その高齢者も健康寿命の伸びによって、引退後の期間の縮小が進むであろう。名目的な経済成長は通貨レートによって補正されるし、実質経済成長も低いほうが魅力的な国になるのは、文化の独自性や自然環境の豊かさのためである。

人間は経済成長をすることによって、人間以外の環境に深刻な負荷を与えてきた。過度な成長は人間以外からの収奪を意味し、結局は回りまわって、人間社会にも大きな矛盾をもたらすのだから、適正な成長こそ真理である。

 

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