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NO.43 高橋陽子 評議員「 あらゆる分野で必要になってきた福祉的視点(1)」

「あらゆる分野で必要になってきた福祉的視点(1)」

 高橋陽子 評議員(公益社団法人日本フィランソロピー協会 理事長)

 

あらゆる分野で必要になってきた福祉的視点

昨今、残虐な事件が増えてきました。7月の神奈川県相模原市の障がい者施設での障がい者のみを襲った殺人事件は、あまりに衝撃的で、解明までには時間がかかりそうですが、マスコミがセンセーショナルに書き立てているように、犯人の精神障害や薬物障害、人格障害、優生思想などに原因を特定するような視野狭窄に陥って短絡的に捉えるのではなく、冷静に粘り強い解明が必要だと思います。課題も複雑化・深刻化しており、従来の福祉・教育・司法など縦割りの制度の中では解決できない問題が多くなってきています。

d8367915226688a3ae090f6251a13143_s先日、ある中学校の先生が言った言葉が、近年の様々な現場での混乱や実情を表していると思います。「教師は、これまでは、学習指導・生活指導をしていればよかったが、今は、福祉も担わなければならなくなっている」。各クラスに2~3人は発達障がい児を含めた障がい児がいるそうで、その対応には、苦労をしているそうです。そこへ、保護者のクレームも加わり、教師のストレスはかなり増大しています。こうした、個々の場での解決されない課題が少しずつ重なり合って、事件は起きるのかもしれません。

犯罪や事故が起こる背景には、様々な要因がありますが、それを全く門外漢、他人事と捉えてしまえなくなってきました。自己責任として切り捨てるのではなく、誰も見捨てない社会づくりをめざすことが、新たな価値創造の要になってほしいと思います。そして、様々な視点から考え、支える人たちの“福祉”への参画が不可欠になってきたことを考えるとき、いくつかの事例をご紹介して、参画へのヒントとしていただきたいと思います。

 

職親プロジェクト

2013年2月、関西の企業7社で始めた、刑を終えて出所してきた人を雇用するプロジェクトです。平成26年の出所者の再犯率は47.1%という調査結果があります。そして、同年に刑務所に再び収容された者のうち、72.2%が再犯時に無職であったといいます。住居・仕事など、出所と同時に得ることは難しい。

27de4c2c866fe2ffff6969f67f49b5b3_sそうした課題解決のための一助に、と、 お好み焼きの「千房」の中井政嗣社長が、出所者の雇用を進めています。知り合いから頼まれて刑務所に公募のチラシを出し、面接も刑務所内で、そして出所の折には迎えに行ったところから始まります。その後、日本財団から6カ月間月8万円の支援の提案があり、寮や寝具、衣類などで一人70~80万円の経費を受けることが可能になり、職親プロジェクトとして他企業へも呼びかけました。

千房では、初年度は4名面接して2名を採用しました。その折、不採用になった人から後日、中井社長に手紙が来ました。「採用された人が羨ましい。自分の過去を隠さなくていいから、前に進める」。実際、面接の折、中井社長は「ここまでひどい目に遭ってきたのか、よくここでとどまった」と思い、何度も泣いたと言います。

罪は本人が償わなければならないけれど、更生と自立には、出所後の周りの目と手が重要な役割を果たします。現在では、関西・関東・九州地域の35社が参加しています。ただし、定着率はまだまだ。今後の参加企業の広がりやサポート体制の充実などが求められます。

 

 ▶次回は引き続き、高橋評議員による「 あらゆる分野で必要になってきた福祉的視点(2)」として、障がい者の逮捕・社会復帰に関わる問題と、そのサポートに取り組む『共生社会を創る愛の基金』の活動を例に、『「誰も見捨てない」社会づくり』について考察します。

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